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美術館と電車

墨と金 根津美術館〜その1〜

www.nezu-muse.or.jp

訪問日: 2/7(水曜日)

期間: 前期

ジャンル: 主に狩野派の絵画、仏像、茶の湯、時計、工芸品他

時代: 室町時代、江戸時代(江戸狩野、京狩野双方あり)

 

~はじめに~

展示終了ギリギリに訪れた本展。

 

墨と金というメインタイトルだが、

展示内容から察するに

「墨」とは

元信を初めとした室町時代狩野派の絵師

その技法を濃く受け継いだ山雪が

代表的である京狩野のことをさし、

「金」とは

江戸時代の絵師である探幽を中心とした

江戸狩野のことをさすのだろう。

 

狩野派スペースの展示の意図は、

室町時代狩野派の技法が

江戸時代にどのような影響を及ぼし、

また同時代から発展していった

江戸狩野と京狩野の比較

……といったところだろうか。

 

まぁ、私には

江戸狩野と京狩野の違いが

深く理解できなかったのだけれども

 

いや、違いは分かるんだけど

自分の理解とパネルの解説が噛み合ってなくて……笑

 

狩野派スペース〜

一階にある2つの展示室を使用し、元信が描いたとされる屏風が2点、そしてすぐ近くに江戸狩野、2つ目の展示室に京狩野の作品が数点展示されている。

 

印象に残った作品は後述するが、すごぶるクオリティが高い作品がチラホラ。

 

さすが狩野派といったところだが

展示している作品を

ほぼ所蔵品で賄っている根津もすごい。

たぶん所蔵品の1級ぶりは私立のなかではトップクラスではなかろうか……?

 

・養蚕機織図屏風(ようさんはたおりずびょうぶ)

室町時代の絵師、狩野元信の作品だとされる六曲一双の図屏風

中国風の山水画に養蚕と機織の労働に勤しむ人々を生き生きと描いた作品である。

なんでこれ重要文化財にもなってないんだろ…(ボソッ

 

左右の画面の密度を高くし、

視線が最も集中するだろう中央部は霞や霧といった静かな空間が広がっている

……という狩野派お家芸ともいえる伝統の構図であり、

この構図を覚えておけば江戸狩野と京狩野の違いが(たぶん)分かるんだぞ☆

 

瓦の詳細な描写といった誠実な建物の描き方、

木々の幹の荒々しさを浮き上がらせるダイナミックな筆の運び、

線の濃淡を使い分け奥行きを表現させているといった

高い画力を伺わせる屏風絵であり、

どれだけこれを描いた絵師がすごい人物であるかが

よ~くわかる作品となっています!

 

・四季花鳥図屏風

これも元信作だとされる作品

穏やかな筆運びで優雅に佇む孔雀を初めとした鳥や花が描かれている。

 

そうこの屏風、雰囲気は穏やかなのである。

 

だけどこの作品

筆のタッチ濃淡

鳥の羽の質感を描き分けているという

とんでもねぇ変態画力が、

そこかしこに点在する、

(見ている側が)ザワザワする作品である。

 

ほら、鳥ってフワフワした羽とかパリッとしたかた~い羽とか色んな質感をした羽を生やしているじゃないですか?

 

それを

(当方鳥のことはあまり詳しくないが)

ちゃんと描き分けてるってすごくね???

若冲せんせ〜い、ここに鳥の描写が変態的な絵師フレンズが1人いましたよ〜!!!

 

 

・両帝図屏風

江戸狩野を開拓されたとする(パネル情報)探幽の作品

中国の皇帝が描かれているんだぞ(タイトルのまんまじゃねぇか)

 

さて、これは江戸狩野。

 

従来の狩野派のDNAを受け継ぎながら新たなる狩野を切り拓いたとされるが……

 

根津「ほらー、濃密な従来の狩野とは違って空白のある淡麗な画風になっているでしょー?すごいでしょー?^^」

 

私「分からねぇよ!!!!!!ダンッ」

 

いや、分かる。分かるんだよ。

これが狩野だなーってことは。

でもこれ、

 

どこがアプデされてんの?????

 

わっ、分からねぇ〜(;´Д`)

 

そう、構図は先に展示された元信(らしい)図屏風のそれと似ている。

 

だけど似すぎているのか、

私の審美眼が未熟すぎるのか(たぶんこれが正解)

どこが江戸狩野なのか理解できない。

 

でも、まぁ、

スッキリとした画面をした

江戸狩野の名品なんでしょう!(開き直った)

 

〜桜下??猫図屏風〜

実は桜下と猫の間に単語があるんですが、

読みがわからなくて挫折しました(不勉強で申し訳ない)

 

これは分かる。

江戸狩野だって分かる。

 

だって元信さんあたりはこんなに画面をスッキリさせないもん(※注1)

 

猫の表情がユーモラスでとても愛らしい

たぶん猫好きにはたまらない絵になるんでしょうか(私?犬派ですよ)

 

少し大振りに描かれた桜花は胡粉で描かれており、

所々盛り上がっていて、見る場所によっては展示の光でキラキラ光って見えます。

\ メッチャキレイ /

 

実は日本画の顔料(色を付けるために必要なものですね)の材料は

辰砂といった鉱物や貝殻から出来てるんです。

他にもラピスラズリやアズライトなど美しい色をもった鉱物が使われています。

「瑠璃」はラピスラズリからできているんですよ~!

(とはいっても高価なラピスラズリを使わない、もう少しグレードの下がった瑠璃があることも確かですが)

 

日本画(近代前の西洋画もそうですが)の色は

宝石のような石からできているんです。

 

そう思うと、絵画を見る目が変わると思いませんか?

 

胡粉は鉱物ではなく貝殻から出来た顔料ですが、

(昔は鉛白という鉛から作られていたそう)

 

これも日本画には欠かせない重要なものとなっています。

(ちなみに日本画は顔料と膠を混ぜ合わせたもので色をつけます。この配合の仕方にも気を使わなければならないんです)

 

さてこの胡粉、貝殻で出来てるといいました。

 

実はね、胡粉蓄光もできるものもあるそうです

昼間の光を蓄え、夜になると自ら微かに光ることが出来るんだそう。

 

その胡粉の特性を上手く利用した作品に

京都にある智積院というお寺さんにある障壁画「桜図」というものがあります。

 

この智積院

元は息子である鶴松を幼くして亡くした秀吉が菩提寺として建てたもので、

「桜図」は夜に智積院を訪れた秀吉に

仄かに光る胡粉の桜を見せていたと思われます。

 

つまり、

今回のこの猫ちゃんの図屏風も

夜に見ると桜の花弁が光って見えるかもしれませんね…!

 

…とまぁ、

ここまで長い豆知識を垂れ流しましたが

この情報元、

先の京博の国宝展で手に入れました

そして「桜図」の知識は

タクシーの運転士らしきおっちゃんが

お客さんらしきマダムにしていた話を

盗み聞きしたものです。

あのおっちゃんマジで何者だったんだ……

 

え?それ以外に豆知識持ってんのかって?

 

持ってるよぉ?

 

話そうかぁ????(自重しないスタイル)

 

先ほど話した智積院の障壁画、

その作者は長谷川等伯というこれまたビッグネームの絵師と

その息子である久蔵の2人の絵師です。

(ちなみに等伯は当時画壇を占拠していた狩野派に真っ向から勝負を挑んだ超カッコイイ絵師であります。詳しくはウィキペディアで、どうぞ)

 

そのうち「桜図」は息子である久蔵の作品で、

その大胆な構図

華麗なる桜の荘厳なオーラ

父親である等伯の作品と比べても

負けず劣らずと評価していいでしょう。

 

むしろ人によっては

久蔵の方がよくね?

と思う方も出てくるのではないでしょうか。

 

さて、こう聞くと久蔵の他の代表作も知りたくありません?

 

実はね、この桜図は彼の

画壇のデビュー作かつ最高傑作であり

「遺作」でもあるんです(※注2)

 

そうこの久蔵、

 

これを描いた来年に亡くなってます。

 

享年26歳。

 惜しいと思うでしょ……。それ正解よ……。

 

この現実に1番打ちのめされたのは

父親である等伯に違いありません。

 

ですが彼、

才能溢れる若き息子を亡くした悲しみを乗り越え、

もう一つの障壁画「楓図」の制作に取り掛かります。

 

息子を想う父の力が作品にこもった「楓図」。

 

その全容は是非

智積院に訪れて実物を見てください。

 

この物語を知っているかそうでないかできっと智積院の障壁画を見る目は変わります

 

行く時は博物館に連れてかれていないかをチェックしてね(これ重要!)

 

〜仮のまとめ~

ほぼ必要ない豆知識で

スペースをかなり割いてしまいましたが、

一階の狩野派スペースの感想はひとまずこれで終わりにします。

 

根津美術館語りはまだ続きますが

もうお腹いっぱいになったのならこの記事で打ち切りしても大丈夫です!

 

いやぁ、

狩野派いいわぁ~。

 

等伯をいぢめたことは許さないが。

 

特に室町時代水墨画が好き。

 

室町から江戸時代の日本美術は

等伯琳派と応挙が特に推しなんですけど、

 

狩野派

室町そして江戸の美術を語るには必要不可欠ですからね。

 

勉強したいと思います。

 

とすると、

 

ああ〜

 

また中国絵画の壁が私の前に立ち塞がる。

 

……大学受験の時は世界史選択だったけど、中国の歴史ぜんぜん覚えてないぞぉ泣

 

※注1 今回の展示で手に入れた付け焼き刃の知識です。信用しないでください。

※注2 桜は儚さの象徴ともいえます。夭逝の画家、長谷川久蔵もまさにその儚い桜のように思えます。ですが彼の遺した「桜図」は四百年以上の時を超え今でも大輪の花を咲き誇らせ我々を感嘆とさせています。智積院の永久に咲き続ける胡粉の桜花に、若き肉体を離れ天上へ昇っていった久蔵の魂を想うのも一興でしょう。