MUSEUM and TRAIN

美術館と電車

仁和寺第一期(東博)

訪問日:2018 1/31(水曜日)

期間:第Ⅰ期

ジャンル:仏像(仏教)

時代:平安時代が主。鎌倉、江戸、南北、室町もあり。

 

~はじめに~

下町風俗資料館と共に訪れた今年最初の東博

仁和寺という京都にある真言密教の寺院に伝わる数々の宝物を中心に、最後の方では数尊の秘仏が鑑賞できるなど見応えのある展覧会だった。

しかし第二期には大阪の葛井寺から国宝である千手観音菩薩坐像が訪れるため、またリピートしなくてはいけない。

まったく今年の上野のバレンタインシーズンはすごいことになってますな!

 

~第一会場~

空海の遺筆も残る三十帖冊子といった貴重な書物から(一週間前には全帖公開されていたらしい)、北宋の作例を示す「孔雀明王像」、平安時代に作成された子島曼荼羅胎蔵界部分など国宝、重文クラスの名品がゾロゾロと…ここだけでも頭がパンクしそうである。

 

孔雀明王

え?これ明王なの?と疑問符を打ちたくなるぐらいに穏やかで、慈悲のある表情をなさった孔雀明王を描いたもの。孔雀は毒蛇を食べることから「人々の厄災を除く功徳」のある明王とされている。

不動明王とか降三世明王とか愛染明王とか、基本的に如来の化身とされる明王は憤怒の表情、簡素な法衣という外見的特徴をしているが、この明王は決して憤怒ではなく静かな表情で孔雀の上に坐し我々を見守っているかのように見える。

美術的に見れば…繊細に描かれた孔雀の羽と顔つき、明王の穏やかな佇まいは独特の空気感をこの作品に降ろしているように思われる。北宋時代に描かれた絵画のようだ。

全く日本美術分からない人間だが、中国の美術もかじらなければならないと思うと少し泣きそうになってくるゾ。

 

・子島曼荼羅胎蔵界

真言密教にとって如来による真理や悟りを視覚的に表した曼荼羅は欠かせない要素だ。この曼荼羅は紺綾地に金銀泥で描かれており、鮮やかな色彩で描かれることの多い曼荼羅に比べれば異色のように思われるが、個人的にはこのモノクローム的で煌めくように浮かび上がる如来やその他の仏たちによって編み出されたこの曼荼羅が「悟りの境地」を我々に強く伝えるような気分になる。

 

・立体曼荼羅(名前忘れてしまった…)

たしか重文クラスだった気がしたが、これも面白いと思った作品。如来の隣に不動明王、(確か)降三世明王の二尊が配置されたもの。床らしきものがある。

もう一回言おう。床らしきものがある。←これ大事!

しかもこの床っぽいもの、一点透視法のような線が引かれていてとても立体的である。どうしてこんなものになったのか…。いやはやとてもユニークな作品。東博側も「立体」と言ってました。確信犯じゃん。

 

~第二会場~

仏像好きはここから本気だすだろう、ありがたいスペース。

なんてったって春だ、観音堂を再現した展示場(ここは撮影オッケー)がお出迎えをしてくれ、しかも、

一日しか公開されないものを始めとした

通常ではなかなかお目にかかれない貴重~~~な仏様

通期

しかも

数尊

私たちの前に現れてくださる

というありがてぇ…本当にありがてぇ…東博さんと仁和寺さん、そして仏様を上京させてくださった様々なお寺さんの太っ腹さと寛容さに感謝するしかない、そんな展示場になっています!

 西洋美術館も科博もいいけど、東博も行こうね! /

 

馬頭観音菩薩坐像

まさかの慶派。

お顔の筋肉の盛り上がり具合で「あ~確かに~」と思わせる、気迫ある観音菩薩坐像。というかこんな観音菩薩、あんまり見ない。

それもそのはず

馬頭観音は憤怒の形相が一般的。これは珍しい。

観音菩薩の変化身の一つで、馬の頭がある。日本では日本海沿海の地域に馬頭観音を本尊とした寺院が集中しているらしく、これも福井の中山寺の本尊。鎌倉時代の作品。慶派といわれれば平安末期か鎌倉時代だからね。

 

・十一面観音菩薩立像

大阪の道明寺の本尊であり秘仏

こっちはいつもの穏やかな観音様。

服の線、というか流れるようなプロポーションと布の質感表現がとても素晴らしく、台座近くにある荒々しく残った木材とのコントラストも良い。

これは一木彫刻で、一本の木材から彫り上げられている。

このことを踏まえるとまるでこの観音様が

木からすっと生まれ出でたような

神秘的で、神々しい、

正に清純な仏様なのではなかろうか…と溜め息交じりに圧倒される。

まさに平安の木彫像の傑作といえる仏像だろう。

 

如意輪観音菩薩坐像(にょいりんかんのんぼさつざそう)

兵庫の甲山中腹に位置する神呪寺(かんのうじ)の秘仏。年に一回公開される。

まあ、秘仏で年一公開されるなんてまだマシな方だが。

 

だから一層今回、西洋美術館に行く人々を東博に引きずりこみたい気持ちが…

 

さて、この如意輪観音、ぱっと見これは(リンク先の下の方にいる)

www.tnm.jp

授業を聞いてないヤンキーのポーズに見えなくもないが、

右の第一手で肘をついているのは「思惟相」を表しているそう。

決して授業を聞いていないどころか、

授業よりも深いレベルへこのヤンキー観音様は到達しようとしているのである。

さてこの観音様、右の第一手で肘をつき何を考えているのかというと「どうすれば衆生を救うことができるのか」悩んでいるらしい。とても優しいヤンキーである。

 

千手観音菩薩坐像

眼病回復祈願の観音様として崇められる、徳島の雲辺寺の本尊。

難所として知られ、しかも秘仏なのでいつでも見れるとは限らないこの仏像が、

JRに乗り、(京成?なにそれ知らない)

公園改札から1kmにもみたない

平坦な道のんびり歩いて

東博の受付の方に1600円(一般)を貢げば見れる!

この出血大サービス!!!!

 

ほらやっぱり東博行けとあれほど(しつこい)

 

公式サイトのHPの画像では分かりにくいがこの観音様、

とても神々しい。(当たり前だ)

なぜこれが重要文化財に収まっているのかが分からない。

国宝にしてください。お願いします。

これは私の目がおかしいのかもしれないがこの仏像、

少しだけ顎を上に向けているように見える。

まるで、

目が見えぬ者たちの代わりに天へ祈っているかのように。

舐めまわすように…ではなく、じっくりと観察したものの、この仏像は目を完全に閉じているようだ。

もしかしたらこの仏像も…?と様々な想像を掻き立たせる、素晴らしい仏像である。

 

~まとめ~

はっきり言って、

本番はバレンタイン以降からのような気もするが、

むしろ葛井寺の千手観音がまだ来ていない今のうちに、第二会場の秘仏たちをじっくりと鑑賞できるのかもしれない。

それに

貴重な北宋時代の仏画

子島曼荼羅の「胎蔵界」は今のうち!

 

まさに良品揃いのクオリティが高い、安定の展覧会であり、

私みたいに

「仏像が好きになってからあまり日数が経ってないし、奈良とか京都とか大阪とか関西あたりは新幹線を我慢して深夜バス遠征しなくちゃいけないの!」

という仏像好き初心者さんにはたまらない展覧会なのではないでしょうか?

(ちなみに私の仏像沼は平等院からです)

 

しかも秘仏が数尊あるので、見たことはあるけどあの時は人が多すぎてじっくりとは…という後悔をなさっている方も今がチャンスです。

というか今こそがチャンスです。

 

たぶんバレンタイン以降は混みます。

千手観音も見たいけど、

でも他の通期で見れる秘仏もじっくり見たいと悩んでいるそこのアナタ…。

リピートしましょう。バレンタイン前とその後で。

いいじゃない。

秘仏みるために1600円余計に東博に貢いだって。

東博さん、いつもいい展示してくれているじゃない…。貢ぎましょう…。ね?