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美術館と電車

ルドン~秘密の花園~ 三菱一号館

 

公式サイトはコチラ 

ルドンー秘密の花園|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

 

訪問日:2/9(金)

ジャンル:油彩、エッチングや木炭を始めとした白黒画、パステ

時代:1800年代後半から1900年代にかけてのヨーロッパ

 

~はじめに~

今回は、

いつも印象派以降の西洋美術ファンにとって

かゆ~い所に手が届くような展示をしてくれる

あの三菱一号館美術館(自身の所蔵品のためにも)本気を出した

…といってもいいぐらいの展覧会だろう。

 

なにせ

この美術館が愛してやまない所蔵品である

「グラン・ブーケ」の仲間を

わざわざフランスのオルセーから呼び出したのだから。

 

これはスゴイ。これはスゴイぞぉ。

 

きっと小品ばかりを制作してきたルドンの貴重な大作シリーズである

「ドムシー城」の装飾画15点が一堂に日本で会す機会なんて

そうそう滅多にない。

 

いや、それどころか

もうないかもしれない。

 

それくらい、とっても貴重な機会に三菱一号館にて遭遇することができるのだ。

 

~装飾画について~

ルドンは印象派の時代に生きた画家であるが、

その独特な世界観と幻想的な花々、そしてルドンだからこその色彩感覚は

他の画家たち(例えば同年代であるモネとか)とは一線を画す

近代西洋画の奇才なのである。(私の主観だが)

 

そんなルドン、実は小品ばかりを制作していて

いわゆる大作はあまり残していない。

 

「ドムシー城」の装飾画はまさに

貴重すぎるルドンの大作を数点含んだ作品群なのだ。

 

ではその作品群を見るのに私たちはどのような点を留意すべきなのだろう。

これより下は私が実際に展覧会に訪れ感じたポイントである。

(あくまで個人的な意見なので信用しないでね!)

 

ポイントその1

「グラン・ブーケ」とその他作品の違い

 

ポイント2

ルドンだからこその色彩

 

ポイント3

奇抜に描かれた花々

 

・ポイント1について

実は「グラン・ブーケ」、他の作品とは違う特徴を持っている。

そうこの「グラン・ブーケ」、

唯一パステルで描かれた作品であり、

鮮やかな「青色」がメインに使われている。

 

パステルは発色が鮮やかな画材で、どれほどルドンが花瓶の青色を強調したかったのかがよく分かるだろう。

 

こんな大画面の作品をパステルで制作しようなぞ、

よほどのこだわりがなければするハズない。

 

パステルで描かれていることが大きく分かるのは「線」である。

油彩の方はハッキリとした線になっているが

「グラン・ブーケ」はボンヤリとした線になっていて

幻想的な画面作りに一役買っていると思われる。

 

他の装飾画を見比べてみて、「グラン・ブーケ」との相違点を見てみましょう!

 

・ポイント2について

さてルドンは当時の時代の画家に比べると、少し変な色遣いをしているように思う方々も多いのではないだろうか。

 

モネやルノワールといった印象派の大家は比較的

明度の高い色を使っているのに対し、

 

ルドンはというと

明度も彩度も低い色をベースに、

少しだけ鮮やかで発色が明るい色を所々使用している。

 

そうルドンという画家、

時代の最先端どころか

次世代絵画にも通じる絵を描いていたともいえるのだ。

(これも私の主観ですので信用なさらぬように)

 

ドムシー城の装飾画もルドンの類まれなる色彩感覚をたっぷりと楽しむことが出来る。

ちょっと花が浮いて見えたり

人物と背景が一体となった不思議な溶け合いも

ルドンの色彩感覚の賜物である(と思われる)。

 

装飾画を見る際は、ルドン独自の幻想的な色彩を楽しんでみてはいかがだろうか?

 

・ポイント3について

ルドンといえば花である。

たぶん、花である。

たぶん……(美術好き初心者ゆえに自信がない)

 

花といえば古今東西どの美術世界にとっても

メインとなって画面を華々しく飾ったり

絵に文字通り「花を添える」名脇役になったりと

美術には欠かせない存在であり、

その花をどう描くかによって画家や絵師の個性も出る面白いテーマでもある。

(そうだろう、たぶん……)

 

そんなルドンの花はというと

現実的でない花である。(相当ザックリ言えば)

 

画面の中で可愛らしくフワフワ浮いていたり、

空へ向かって「ニョキッ」とユニークな姿で伸びていたり……。

 

ルドンの描く作品に登場する花は

現存する花よりもずっと生き生きとした生命にあふれていて、

また我々の目に見えない世界へといざなう案内人(花?)でもある。

 

装飾画に描かれた花々の表情を楽しみ、また美しくも妖しいルドンの世界にひきこまれボーッと作品を見つめるのも一興だろう。

 

~装飾画以外の作品について~

さてルドンの魅力は印象派の時代の中にいながら

その作品の中は独特で幻想的な世界が広がっているということだろう。

 

ぶっちゃけ言うと

ルドンが印象派の時代に生きているなんて意外過ぎる。

 

それくらい他の印象派といわれるジャンルに属するといわれる画家たちとは違う作品をルドンは遺し、また現在でも数多の藝術愛好家に愛されているのだ。

 

それにしても

「グラン・ブーケ」が日本にあるなんてマジ奇跡。

よく手に入れられたよなぁ……。

 

・若き日の仏陀

ルドンの描く仏陀なんてこの字面だけでも興味をそそられる。

そして実際、

とても素晴らしい作品だった。

十分以上は前に立ってたよ私。

実はこの作品を見るために三回隣の装飾画コーナーを行き来していたんだ~。

 

何がいいかってこの作品、

仏陀の瞑想を油彩画の手法で描くと

こうなるのかーと思うのと同時に

日本やそれ以外の東洋にある

仏教画や仏像を照らし合わせてしまう

非常に深い沼に引きずり込む所だと思う。

 

そして沼に引きずり込まれると、怪しい人物を見るような目つきでこっちを見てくる学芸員さんのことを気にしなくなるんだゾ♡

 

 

 

墨と金 根津美術館~その2〜

~はじめに〜

さて、根津美術館パート2である。

 

パート1では

私が豆すぎる豆知識を無駄に語ってしまったために

相当の文字数になってしまった。

 

この記事ではあっさりと語りたい。

 

そろそろ私も書くのに疲れてきたし。

 

~そもそも根津美術館とは~

根津美術館東武の社長も務めた

根津嘉一郎氏のコレクションを収蔵品として収めている。

 

この根津氏、茶人であるがそのコレクションは茶器だけでなく

あの燕子花図屏風(五千円札の裏側にある花の絵ね)

をはじめとした日本画

工芸品、

刀剣の鍔、

さらに古代中国の青銅器といった

幅が広すぎる蒐集をしている。

 

しかもそのどれもが一級品である。

どんだけ鉄道とかで設けたんだ。

 

美術品をコレクションしていた鉄道に深く関わった事業家は他にもいて、

例えば東急の五島慶太氏もその一人である。

 

たぶん関東大手私鉄を知る人から見れば

東武のあの独特なセンス

東急のあのオシャレさを比較すれば

五島氏のコレクションの方が充実してそうに思えるだろう。

 

確かに五島氏のコレクションも悪くはない。

 

しかし…

尾形光琳

円山応挙

狩野元信!

双羊尊!

などを出されてしまえば

根津の方に軍配を上げてしまう。

東急ファンの方すみません……

 

とまぁ、

そんなわけで根津は一級品を収めている美術館なのだが、

実は庭もあるのだ。

すごくいい庭が。

ちなみに東博も庭を持っているよ!

 

しかもこの庭、

茶室がある。元々根津邸の庭だったから。

 

そ~なんです、この美術館、

根津嘉一郎さんのお屋敷の跡地に建っているんですよ!

 

てなわけで、

東武関係の聖地巡礼にいかがですか!?

古美術沼に落とすというお得なオプション付きですよ!!!!(満面の笑み)

 

さて、次の話題に映りましょう。ふぅ。記事を書くのも大変だ。

 

狩野派以外にも色々あるんだぞ~

さて狩野派を見終わった。

 

そういえば、この展示を見る前には

素敵な庭を軽く散策したり、

男子トイレに間違って入ったりと(前来た時にもやらかした)

色々なことが起こっていたなぁ。(白目)

さすがに二回も男子トイレ間違えて入るってどういうことよ……

 

ということを振り返りながら、二階にあげると

そこにはあら不思議、

茶の湯ワールド

工芸品ワールド

古代中国の青銅器ワールド

広がっているじゃありませんか~(ニコニコ)

 

茶の湯ワールドでは

今年の干支に関した茶器などが展示されており、

 

工芸品ワールドではこれまた

名品の百椿図とそれにちなんだ美しい工芸品が並んでいて、

 

青銅器ワールドには

根津美術館のアイドル「そうちゃん」に会えちゃう!

 

いやぁ~

充実した内容だなぁ~~~!!(洗脳されてる)

 

ちなみに「そうちゃん」とは

根津美術館が誇る収蔵品「双羊尊」のことで、

ご丁寧にも来館時に受付の方が

「そうちゃん」のプリントされたカードを配って、

洗脳お出迎えしてくれるんです!

 

なんてフレンドリーな美術館なんでしょう!!(洗脳された)

 

 

~そろそろ終えたい、この記事を~

……てなわけで、

クオリティの高い様々なジャンル収蔵品を持つ根津美術館

 

今回は狩野派を中心とした展示でしたが、

ゴールデンウイーク近くになると

燕子花図屏風が見れちゃいます!

たぶんお庭の方にも燕子花が咲いているはず!

 

その後は恒例の「古美術入門」と題した展覧会がされるので

「ちょっと日本美術って難しそう……」

と悩んでいる方にもピッタリ!

 

根津美術館は小さなスペースでの展示なので

主要作品がどれなのか分かりやすく

また見る作品も少なく済むので

鑑賞の負担が少ないです。

 

ある意味、

初心者さんにもオススメできる美術館だと私は思います。

 

特におすすめしたいのがGWの燕子花図屏風の展覧会で、

紙幣にも採用された超有名な国宝が見れるというのに

人の波に揉まれながら作品を見るストレスが比較的少ないのです。

 

綺麗なお庭と美術品をゆったりと楽しめる根津美術館

メトロに乗ってちょっとフラリと寄ってみませんか?

 

墨と金 根津美術館〜その1〜

www.nezu-muse.or.jp

訪問日: 2/7(水曜日)

期間: 前期

ジャンル: 主に狩野派の絵画、仏像、茶の湯、時計、工芸品他

時代: 室町時代、江戸時代(江戸狩野、京狩野双方あり)

 

~はじめに~

展示終了ギリギリに訪れた本展。

 

墨と金というメインタイトルだが、

展示内容から察するに

「墨」とは

元信を初めとした室町時代狩野派の絵師

その技法を濃く受け継いだ山雪が

代表的である京狩野のことをさし、

「金」とは

江戸時代の絵師である探幽を中心とした

江戸狩野のことをさすのだろう。

 

狩野派スペースの展示の意図は、

室町時代狩野派の技法が

江戸時代にどのような影響を及ぼし、

また同時代から発展していった

江戸狩野と京狩野の比較

……といったところだろうか。

 

まぁ、私には

江戸狩野と京狩野の違いが

深く理解できなかったのだけれども

 

いや、違いは分かるんだけど

自分の理解とパネルの解説が噛み合ってなくて……笑

 

狩野派スペース〜

一階にある2つの展示室を使用し、元信が描いたとされる屏風が2点、そしてすぐ近くに江戸狩野、2つ目の展示室に京狩野の作品が数点展示されている。

 

印象に残った作品は後述するが、すごぶるクオリティが高い作品がチラホラ。

 

さすが狩野派といったところだが

展示している作品を

ほぼ所蔵品で賄っている根津もすごい。

たぶん所蔵品の1級ぶりは私立のなかではトップクラスではなかろうか……?

 

・養蚕機織図屏風(ようさんはたおりずびょうぶ)

室町時代の絵師、狩野元信の作品だとされる六曲一双の図屏風

中国風の山水画に養蚕と機織の労働に勤しむ人々を生き生きと描いた作品である。

なんでこれ重要文化財にもなってないんだろ…(ボソッ

 

左右の画面の密度を高くし、

視線が最も集中するだろう中央部は霞や霧といった静かな空間が広がっている

……という狩野派お家芸ともいえる伝統の構図であり、

この構図を覚えておけば江戸狩野と京狩野の違いが(たぶん)分かるんだぞ☆

 

瓦の詳細な描写といった誠実な建物の描き方、

木々の幹の荒々しさを浮き上がらせるダイナミックな筆の運び、

線の濃淡を使い分け奥行きを表現させているといった

高い画力を伺わせる屏風絵であり、

どれだけこれを描いた絵師がすごい人物であるかが

よ~くわかる作品となっています!

 

・四季花鳥図屏風

これも元信作だとされる作品

穏やかな筆運びで優雅に佇む孔雀を初めとした鳥や花が描かれている。

 

そうこの屏風、雰囲気は穏やかなのである。

 

だけどこの作品

筆のタッチ濃淡

鳥の羽の質感を描き分けているという

とんでもねぇ変態画力が、

そこかしこに点在する、

(見ている側が)ザワザワする作品である。

 

ほら、鳥ってフワフワした羽とかパリッとしたかた~い羽とか色んな質感をした羽を生やしているじゃないですか?

 

それを

(当方鳥のことはあまり詳しくないが)

ちゃんと描き分けてるってすごくね???

若冲せんせ〜い、ここに鳥の描写が変態的な絵師フレンズが1人いましたよ〜!!!

 

 

・両帝図屏風

江戸狩野を開拓されたとする(パネル情報)探幽の作品

中国の皇帝が描かれているんだぞ(タイトルのまんまじゃねぇか)

 

さて、これは江戸狩野。

 

従来の狩野派のDNAを受け継ぎながら新たなる狩野を切り拓いたとされるが……

 

根津「ほらー、濃密な従来の狩野とは違って空白のある淡麗な画風になっているでしょー?すごいでしょー?^^」

 

私「分からねぇよ!!!!!!ダンッ」

 

いや、分かる。分かるんだよ。

これが狩野だなーってことは。

でもこれ、

 

どこがアプデされてんの?????

 

わっ、分からねぇ〜(;´Д`)

 

そう、構図は先に展示された元信(らしい)図屏風のそれと似ている。

 

だけど似すぎているのか、

私の審美眼が未熟すぎるのか(たぶんこれが正解)

どこが江戸狩野なのか理解できない。

 

でも、まぁ、

スッキリとした画面をした

江戸狩野の名品なんでしょう!(開き直った)

 

〜桜下??猫図屏風〜

実は桜下と猫の間に単語があるんですが、

読みがわからなくて挫折しました(不勉強で申し訳ない)

 

これは分かる。

江戸狩野だって分かる。

 

だって元信さんあたりはこんなに画面をスッキリさせないもん(※注1)

 

猫の表情がユーモラスでとても愛らしい

たぶん猫好きにはたまらない絵になるんでしょうか(私?犬派ですよ)

 

少し大振りに描かれた桜花は胡粉で描かれており、

所々盛り上がっていて、見る場所によっては展示の光でキラキラ光って見えます。

\ メッチャキレイ /

 

実は日本画の顔料(色を付けるために必要なものですね)の材料は

辰砂といった鉱物や貝殻から出来てるんです。

他にもラピスラズリやアズライトなど美しい色をもった鉱物が使われています。

「瑠璃」はラピスラズリからできているんですよ~!

(とはいっても高価なラピスラズリを使わない、もう少しグレードの下がった瑠璃があることも確かですが)

 

日本画(近代前の西洋画もそうですが)の色は

宝石のような石からできているんです。

 

そう思うと、絵画を見る目が変わると思いませんか?

 

胡粉は鉱物ではなく貝殻から出来た顔料ですが、

(昔は鉛白という鉛から作られていたそう)

 

これも日本画には欠かせない重要なものとなっています。

(ちなみに日本画は顔料と膠を混ぜ合わせたもので色をつけます。この配合の仕方にも気を使わなければならないんです)

 

さてこの胡粉、貝殻で出来てるといいました。

 

実はね、胡粉蓄光もできるものもあるそうです

昼間の光を蓄え、夜になると自ら微かに光ることが出来るんだそう。

 

その胡粉の特性を上手く利用した作品に

京都にある智積院というお寺さんにある障壁画「桜図」というものがあります。

 

この智積院

元は息子である鶴松を幼くして亡くした秀吉が菩提寺として建てたもので、

「桜図」は夜に智積院を訪れた秀吉に

仄かに光る胡粉の桜を見せていたと思われます。

 

つまり、

今回のこの猫ちゃんの図屏風も

夜に見ると桜の花弁が光って見えるかもしれませんね…!

 

…とまぁ、

ここまで長い豆知識を垂れ流しましたが

この情報元、

先の京博の国宝展で手に入れました

そして「桜図」の知識は

タクシーの運転士らしきおっちゃんが

お客さんらしきマダムにしていた話を

盗み聞きしたものです。

あのおっちゃんマジで何者だったんだ……

 

え?それ以外に豆知識持ってんのかって?

 

持ってるよぉ?

 

話そうかぁ????(自重しないスタイル)

 

先ほど話した智積院の障壁画、

その作者は長谷川等伯というこれまたビッグネームの絵師と

その息子である久蔵の2人の絵師です。

(ちなみに等伯は当時画壇を占拠していた狩野派に真っ向から勝負を挑んだ超カッコイイ絵師であります。詳しくはウィキペディアで、どうぞ)

 

そのうち「桜図」は息子である久蔵の作品で、

その大胆な構図

華麗なる桜の荘厳なオーラ

父親である等伯の作品と比べても

負けず劣らずと評価していいでしょう。

 

むしろ人によっては

久蔵の方がよくね?

と思う方も出てくるのではないでしょうか。

 

さて、こう聞くと久蔵の他の代表作も知りたくありません?

 

実はね、この桜図は彼の

画壇のデビュー作かつ最高傑作であり

「遺作」でもあるんです(※注2)

 

そうこの久蔵、

 

これを描いた来年に亡くなってます。

 

享年26歳。

 惜しいと思うでしょ……。それ正解よ……。

 

この現実に1番打ちのめされたのは

父親である等伯に違いありません。

 

ですが彼、

才能溢れる若き息子を亡くした悲しみを乗り越え、

もう一つの障壁画「楓図」の制作に取り掛かります。

 

息子を想う父の力が作品にこもった「楓図」。

 

その全容は是非

智積院に訪れて実物を見てください。

 

この物語を知っているかそうでないかできっと智積院の障壁画を見る目は変わります

 

行く時は博物館に連れてかれていないかをチェックしてね(これ重要!)

 

〜仮のまとめ~

ほぼ必要ない豆知識で

スペースをかなり割いてしまいましたが、

一階の狩野派スペースの感想はひとまずこれで終わりにします。

 

根津美術館語りはまだ続きますが

もうお腹いっぱいになったのならこの記事で打ち切りしても大丈夫です!

 

いやぁ、

狩野派いいわぁ~。

 

等伯をいぢめたことは許さないが。

 

特に室町時代水墨画が好き。

 

室町から江戸時代の日本美術は

等伯琳派と応挙が特に推しなんですけど、

 

狩野派

室町そして江戸の美術を語るには必要不可欠ですからね。

 

勉強したいと思います。

 

とすると、

 

ああ〜

 

また中国絵画の壁が私の前に立ち塞がる。

 

……大学受験の時は世界史選択だったけど、中国の歴史ぜんぜん覚えてないぞぉ泣

 

※注1 今回の展示で手に入れた付け焼き刃の知識です。信用しないでください。

※注2 桜は儚さの象徴ともいえます。夭逝の画家、長谷川久蔵もまさにその儚い桜のように思えます。ですが彼の遺した「桜図」は四百年以上の時を超え今でも大輪の花を咲き誇らせ我々を感嘆とさせています。智積院の永久に咲き続ける胡粉の桜花に、若き肉体を離れ天上へ昇っていった久蔵の魂を想うのも一興でしょう。

 

 

 

仁和寺第一期(東博)

訪問日:2018 1/31(水曜日)

期間:第Ⅰ期

ジャンル:仏像(仏教)

時代:平安時代が主。鎌倉、江戸、南北、室町もあり。

 

~はじめに~

下町風俗資料館と共に訪れた今年最初の東博

仁和寺という京都にある真言密教の寺院に伝わる数々の宝物を中心に、最後の方では数尊の秘仏が鑑賞できるなど見応えのある展覧会だった。

しかし第二期には大阪の葛井寺から国宝である千手観音菩薩坐像が訪れるため、またリピートしなくてはいけない。

まったく今年の上野のバレンタインシーズンはすごいことになってますな!

 

~第一会場~

空海の遺筆も残る三十帖冊子といった貴重な書物から(一週間前には全帖公開されていたらしい)、北宋の作例を示す「孔雀明王像」、平安時代に作成された子島曼荼羅胎蔵界部分など国宝、重文クラスの名品がゾロゾロと…ここだけでも頭がパンクしそうである。

 

孔雀明王

え?これ明王なの?と疑問符を打ちたくなるぐらいに穏やかで、慈悲のある表情をなさった孔雀明王を描いたもの。孔雀は毒蛇を食べることから「人々の厄災を除く功徳」のある明王とされている。

不動明王とか降三世明王とか愛染明王とか、基本的に如来の化身とされる明王は憤怒の表情、簡素な法衣という外見的特徴をしているが、この明王は決して憤怒ではなく静かな表情で孔雀の上に坐し我々を見守っているかのように見える。

美術的に見れば…繊細に描かれた孔雀の羽と顔つき、明王の穏やかな佇まいは独特の空気感をこの作品に降ろしているように思われる。北宋時代に描かれた絵画のようだ。

全く日本美術分からない人間だが、中国の美術もかじらなければならないと思うと少し泣きそうになってくるゾ。

 

・子島曼荼羅胎蔵界

真言密教にとって如来による真理や悟りを視覚的に表した曼荼羅は欠かせない要素だ。この曼荼羅は紺綾地に金銀泥で描かれており、鮮やかな色彩で描かれることの多い曼荼羅に比べれば異色のように思われるが、個人的にはこのモノクローム的で煌めくように浮かび上がる如来やその他の仏たちによって編み出されたこの曼荼羅が「悟りの境地」を我々に強く伝えるような気分になる。

 

・立体曼荼羅(名前忘れてしまった…)

たしか重文クラスだった気がしたが、これも面白いと思った作品。如来の隣に不動明王、(確か)降三世明王の二尊が配置されたもの。床らしきものがある。

もう一回言おう。床らしきものがある。←これ大事!

しかもこの床っぽいもの、一点透視法のような線が引かれていてとても立体的である。どうしてこんなものになったのか…。いやはやとてもユニークな作品。東博側も「立体」と言ってました。確信犯じゃん。

 

~第二会場~

仏像好きはここから本気だすだろう、ありがたいスペース。

なんてったって春だ、観音堂を再現した展示場(ここは撮影オッケー)がお出迎えをしてくれ、しかも、

一日しか公開されないものを始めとした

通常ではなかなかお目にかかれない貴重~~~な仏様

通期

しかも

数尊

私たちの前に現れてくださる

というありがてぇ…本当にありがてぇ…東博さんと仁和寺さん、そして仏様を上京させてくださった様々なお寺さんの太っ腹さと寛容さに感謝するしかない、そんな展示場になっています!

 西洋美術館も科博もいいけど、東博も行こうね! /

 

馬頭観音菩薩坐像

まさかの慶派。

お顔の筋肉の盛り上がり具合で「あ~確かに~」と思わせる、気迫ある観音菩薩坐像。というかこんな観音菩薩、あんまり見ない。

それもそのはず

馬頭観音は憤怒の形相が一般的。これは珍しい。

観音菩薩の変化身の一つで、馬の頭がある。日本では日本海沿海の地域に馬頭観音を本尊とした寺院が集中しているらしく、これも福井の中山寺の本尊。鎌倉時代の作品。慶派といわれれば平安末期か鎌倉時代だからね。

 

・十一面観音菩薩立像

大阪の道明寺の本尊であり秘仏

こっちはいつもの穏やかな観音様。

服の線、というか流れるようなプロポーションと布の質感表現がとても素晴らしく、台座近くにある荒々しく残った木材とのコントラストも良い。

これは一木彫刻で、一本の木材から彫り上げられている。

このことを踏まえるとまるでこの観音様が

木からすっと生まれ出でたような

神秘的で、神々しい、

正に清純な仏様なのではなかろうか…と溜め息交じりに圧倒される。

まさに平安の木彫像の傑作といえる仏像だろう。

 

如意輪観音菩薩坐像(にょいりんかんのんぼさつざそう)

兵庫の甲山中腹に位置する神呪寺(かんのうじ)の秘仏。年に一回公開される。

まあ、秘仏で年一公開されるなんてまだマシな方だが。

 

だから一層今回、西洋美術館に行く人々を東博に引きずりこみたい気持ちが…

 

さて、この如意輪観音、ぱっと見これは(リンク先の下の方にいる)

www.tnm.jp

授業を聞いてないヤンキーのポーズに見えなくもないが、

右の第一手で肘をついているのは「思惟相」を表しているそう。

決して授業を聞いていないどころか、

授業よりも深いレベルへこのヤンキー観音様は到達しようとしているのである。

さてこの観音様、右の第一手で肘をつき何を考えているのかというと「どうすれば衆生を救うことができるのか」悩んでいるらしい。とても優しいヤンキーである。

 

千手観音菩薩坐像

眼病回復祈願の観音様として崇められる、徳島の雲辺寺の本尊。

難所として知られ、しかも秘仏なのでいつでも見れるとは限らないこの仏像が、

JRに乗り、(京成?なにそれ知らない)

公園改札から1kmにもみたない

平坦な道のんびり歩いて

東博の受付の方に1600円(一般)を貢げば見れる!

この出血大サービス!!!!

 

ほらやっぱり東博行けとあれほど(しつこい)

 

公式サイトのHPの画像では分かりにくいがこの観音様、

とても神々しい。(当たり前だ)

なぜこれが重要文化財に収まっているのかが分からない。

国宝にしてください。お願いします。

これは私の目がおかしいのかもしれないがこの仏像、

少しだけ顎を上に向けているように見える。

まるで、

目が見えぬ者たちの代わりに天へ祈っているかのように。

舐めまわすように…ではなく、じっくりと観察したものの、この仏像は目を完全に閉じているようだ。

もしかしたらこの仏像も…?と様々な想像を掻き立たせる、素晴らしい仏像である。

 

~まとめ~

はっきり言って、

本番はバレンタイン以降からのような気もするが、

むしろ葛井寺の千手観音がまだ来ていない今のうちに、第二会場の秘仏たちをじっくりと鑑賞できるのかもしれない。

それに

貴重な北宋時代の仏画

子島曼荼羅の「胎蔵界」は今のうち!

 

まさに良品揃いのクオリティが高い、安定の展覧会であり、

私みたいに

「仏像が好きになってからあまり日数が経ってないし、奈良とか京都とか大阪とか関西あたりは新幹線を我慢して深夜バス遠征しなくちゃいけないの!」

という仏像好き初心者さんにはたまらない展覧会なのではないでしょうか?

(ちなみに私の仏像沼は平等院からです)

 

しかも秘仏が数尊あるので、見たことはあるけどあの時は人が多すぎてじっくりとは…という後悔をなさっている方も今がチャンスです。

というか今こそがチャンスです。

 

たぶんバレンタイン以降は混みます。

千手観音も見たいけど、

でも他の通期で見れる秘仏もじっくり見たいと悩んでいるそこのアナタ…。

リピートしましょう。バレンタイン前とその後で。

いいじゃない。

秘仏みるために1600円余計に東博に貢いだって。

東博さん、いつもいい展示してくれているじゃない…。貢ぎましょう…。ね?